yomiyasuを実際に使ってみた。書式の癖は消えたが、文の長さと意味の判断は残った

AIが書いた文章の不自然さを直すスキル yomiyasu を、AIに書かせた3本の文章と、実在の業務文書1本で試した。点数は上がったが、点数と読みやすさは別の話だった。
結論
書式の癖と比喩動詞は取り除けたが、文の長さはほぼ変わらず、意味が動いた箇所もあった。太字や箇条書きが多い技術解説と比喩の多い個人の文章には向き、箇条書きが正しい形式のPR説明文や定義済みの用語が多い文書には向かない。読む人にとって読みやすくなったかどうかは未確認。
結論
AIが書いた日本語を書き直すスキル yomiyasu を、AIが書いた3種類の文章に使った。リンターのスコアは88から100、95から95、96から100だった。一方で、平均文長はほとんど変わらなかった。変わったのは、太字、箇条書き、「刻まれる」「溶けていった」のような比喩動詞、半角空白といった表面の癖である。
向いているのは、太字や箇条書きが多い技術解説と、比喩が目立つ個人の文章だと考えている。箇条書きが正しい形式のPR説明文や、定義済みの用語が多い業務文書には向かない。読む人にとって読みやすくなったかどうかは、読者に読んでもらう確認をしていないので未確認である。
yomiyasuとは
yomiyasu は、AI生成の不自然な日本語を書き直す Agent Skill である。作者は nanaism で、MIT ライセンスで公開されている。取得元は GitHub の nanaism/yomiyasu。
構成は、SKILL.md、比喩動詞やAI語彙のカタログ、tech・business・essay のドメイン別規則、標準ライブラリだけの Python リンターである。主語と述語を復元し、比喩動詞を具体的な動詞に直す点が特徴とされている。禁止語リスト方式からの改善を主張している。
作者の根拠は Qiita 7万件の調査などである。この調査も、スキルが引用する論文も、私は確認していない。主張の当否は、この記事では判断しない。
導入前に安全性を確認した。リンターの import は sys、re、argparse、json、typing だけで、ファイルを開く処理は読み取りの1か所だけである。ネットワーク通信、サブプロセス実行、ファイル書き込みはない。
検証方法
検証用の文章は、AIに書かせた3本である。素のプロンプトで別のエージェントに書かせ、yomiyasu の規則は伝えていない。内容は、rebase と merge の技術解説、ログイン機能のPR説明文、在宅勤務のエッセイである。エッセイの体験談はAIの創作で、実在の体験ではない。
各文章を yomiyasu の手順どおりに書き直した。比較用に、同じ文章を別のエージェントに「自然な日本語にして」とだけ頼んだ版も作った。モデルはどちらも Sonnet 系である。リンターの前後スコア、文数、平均文長、数字の保存を測った。
- AIに文章を書かせる技術解説、PR説明文、エッセイの3本。yomiyasu の規則は伝えない
- 2通りに書き直すyomiyasu の手順で書き直した版と、「自然な日本語にして」だけ頼んだ素のLLM版
- 同じ物差しで測るリンターのスコア、平均文長、数字の保存。意味の変化は目で比べる
- 実在の業務文書で確かめるai-hub-ops の README を、書き直し前後のコミットで同じように測る
この検証には制約がある。各文章を1回しか試していない。/yomiyasu コマンドは使わず、私が SKILL.md を読んで手作業で適用した。書き換える前にリンターの指摘も見ている。完全に独立した比較ではない。
before / after
先に結果をまとめる。1つ目の表がリンターのスコア、2つ目の表が平均文長(文字数)である。
| 文章 | 元 | 素のLLM | yomiyasu |
|---|---|---|---|
| 技術 | 88 | 93 | 100 |
| PR | 95 | 95 | 95 |
| エッセイ | 96 | 96 | 100 |
| 文章 | 元 | 素のLLM | yomiyasu |
|---|---|---|---|
| 技術 | 35.0 | 31.7 | 35.5 |
| PR | 28.5 | 27.3 | 30.7 |
| エッセイ | 29.1 | 28.2 | 28.0 |
技術解説
元の文章には、太字が3か所、箇条書き、英単語前後の半角空白があった。
| 文 | |
|---|---|
| 元 | 各ブランチで積み上げたコミットは元のまま残り、いつ・どこで分岐して合流したかが履歴に刻まれる。 |
| yomiyasu | 各ブランチで積み上げたコミットは元のまま残り、いつどこで分岐して合流したかが履歴に記録される。 |
太字は全部外れ、3項目の箇条書きは1つの段落になり、「まとめ」の見出しは消えた。素の書き直しは、太字も「刻まれる」も「まとめ」もそのまま残した。
PR説明文
元の文章は、行の71.4%が箇条書きだった。yomiyasu は変更内容、影響範囲、確認してほしい点を文章に直し、手動確認の4手順だけ番号付きリストで残した。比率は26.7%に下がったが、リンターは警告を出し続け、スコアは95点のままだった。
| 文 | |
|---|---|
| 元 | 既存のフィールドは変更していないため、既存クライアントへの影響は小さい想定。 |
| yomiyasu | 既存のフィールドは変更していないため、既存クライアントへの影響は小さい見込みです。 |
PR説明文は、項目を拾い読みできることに価値がある。文章に直した版が、読む人にとって読みやすいとは言い切れない。
エッセイ
| 文 | |
|---|---|
| 元 | それだけのことが、思いのほか効く。 |
| yomiyasu | それだけのことだが、思った以上に役に立っている。 |
「仕事に溶けていった」は「その時間も仕事をして過ごしていた」になった。素の書き直しは、「溶けていった」を「消えていた」に変えただけで、「効く」はそのままである。「儀式」と「自分で自分を運転する」も残っている。
3本の before / after の全文は、検証ログに残している。
業務文書の1例
ai-hub-ops の README は、business 領域の実在文書である。yomiyasu で書き直した前後のコミットを取得し、同じリンターで測り直した。
| 指標 | 書き直し前 | 書き直し後 |
|---|---|---|
| スコア | 23 | 65 |
| 箇条書き比率 | 28.0% | 16.3% |
| 太字(千字あたり) | 2.79 | 0 |
| 警告件数 | 16 | 7 |
| 「正本」の警告 | 6 | 6 |
太字、英単語前後の半角空白、文末のコロンは、すべて除去されている。一方で、「正本」への警告は書き直し前後とも6件で、1件も減っていない。この文書では「正本」が、知識の持ち主を定める定義済みの用語である。言い換えると意味が変わるため、警告を残したまま保持されている。
意味の変化も1点見つかった。原文の「コピーして正本化しない」という自分たちの規則が、書き直しでは「次の2点は禁止です」という見出しに変わり、禁止という強い語が加わっている。読み手に伝わる強さが変わる可能性がある。
リンターは文脈を見ない作りである。ソースの正規表現と語彙表は、単語を文脈なしで照合していた。スコアが上がることと、文章がよくなることは別の話で、この1例はその一部を裏づける。
うまくいった点
事実として確認できたのは4点ある。太字、英単語前後の空白、まとめ見出しがなくなり、「刻まれる」「溶けていった」のような比喩動詞も取り除けた。数字は3本とも原文と同じものが残り、原文にない数値や固有名詞の追加は、私が読んだ範囲では見つからなかった。素の書き直しとは差が出ており、素の版は太字、箇条書き、「刻まれる」「儀式」「運転する」を残している。
感想としては、技術解説の書き直し後は、太字の強調がなくなって落ち着いた文章に読めた。ただし、これは私個人の印象である。
うまくいかなかった点
事実として確認できたことを挙げる。まず、平均文長は目標の30〜45文字に寄らなかった。技術解説は35.0から35.5、エッセイは29.1から28.0で、ほぼ動いていない。文の長さに問題がある文章には効かないと言える。
元の3本は、もともとスコアが88から96だった。伸びしろが小さいため、点数の差を大きな改善とは読めない。PR説明文はスコアが変わらず、箇条書き比率の警告は形式に対する誤検知に近いと考えている。
意味が動いた箇所もあった。技術解説で「他人の作業を壊さない」を「他の人の作業と履歴が食い違わない」に変えたのは、理由の言い換えである。エッセイでは、最後の段落にあった、在宅勤務は楽になる働き方ではないという主張を落とした。PRでは、原文にない「レビュアーは」という主語を足している。
私の最初の書き直し案には、原文にない効果を足した箇所もあった。エッセイで「区切りがつけやすくなった」と書き、原文の「思いのほか効く」より具体的な効果を述べていた。読み返して気づき、直している。規則が増補を禁じていても、守れたのは見直したからで、スキルが自動で防ぐわけではない。
評価が割れる点もある。yomiyasu の版は、素の書き直しより原文からの変更が大きく、書き手の声が薄まる可能性がある。変更が小さい素の版は、AI特有の癖も残したままだった。どちらがよいかは、書き手が何を守りたいかで決まるだろう。
向き不向き
向いているのは、太字と箇条書きが多い技術記事の下書きの整形と、比喩動詞が目立つ個人の文章の見直しである。リンターで書式の癖を機械的に洗い出す作業にも使える。
向いていないのは、箇条書きが正しい形式のPR説明文やチェックリストである。定義済みの専門用語が多い文書では、ai-hub-ops の README のように、リンターの警告を無視する判断が毎回必要になる。文が長すぎる文章にも効くとは言えない。文長の改善は確認できなかった。
導入手順
- nanaism/yomiyasu をクローンし、skills/yomiyasu の中身を .claude/skills/yomiyasu/ に置く。
- 文体調整系の別スキルがあれば、無効にする。作者は干渉の可能性を注意書きに書いている。私の検証では yomiyasu を .claude/skills に置かなかったため、干渉は試していない。
- /yomiyasu ファイル名 –domain tech –full のように呼び出す。–full はリンターの検査まで行う。
- リンターの警告が専門用語への誤検知なら、言い換えず、そのまま残す判断も必要になる。
この記事自体の検査
この記事の本文を yomiyasu のリンターにかけた結果は、検証ログに記録している。初稿は51点で、同一文末の連続と箇条書きの多さを指摘された。文章に直して文末を変え、2回直した結果が下書き版の90点で、残った警告は用語として挙げた語への2件だった。